先生に囚われて
「お前、俺に聞きたいことあんだろ」

「うん……、昨日のこと……」

「ちゃんと答えてやるから、今日家に来い」

「うん」


もうすぐで2限目が始まる。

今朝から昨日の噂を聞いてもう気が気じゃなかったけど、胡桃と雅先輩に昔のことを聞いてもらって、今こうして目の前にりぃ君がいることを確認できて、ようやく心が落ち着いた。

離れ難いけど、りぃ君にも私にも次の授業があるからしょうがない。


そっと顔を上げると視線が絡む。

「心配するようなことは何もねえよ」

「……うん、りぃ君」

「ん?」

「背中、ごめんね」


りぃ君の背中に手を回し、カッターシャツの上からそっと触れる。

りぃ君は一瞬、驚いて目を軽く見開いてから意地悪そうに笑うと、


「そう思うなら引っ搔くなよ」


言葉とともに私の唇に軽く触れるりぃ君の冷たい唇。

……煙草の匂いが一層強くなった。


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