先生に囚われて
今日は職員会議があるから帰りが遅くなる、と自然に渡された家の鍵を握りしめてマンションの前に立っている。

一年目の新米教師が住めるのか、と思うような家賃の高そうなマンション。

3階建で一部屋ずつが広く、エントランスや中庭にグリーンが茂るデザイナーズっぽいここは、オートロックのため暗証番号を入れないとエントランスにも入れない。


……相変わらずいいとこ住んでるなぁ。

何度来ても慣れないし、昔からりぃ君家に行くのは少し緊張する。


自動ドアを潜った先に、開錠するための操作板とインターホンがある。

その前に先客がいたので少し離れたところで待っていると、その女性は呼び出し相手が留守だったのか諦めてこちらへ向かってきた。


綺麗な人。
明るめの長い髪がゆるく揺れたとき、なぜか悲しそうなその女性の表情が気になってしまった。


軽く会釈をしてから横を抜け、エントランスを通るとエレベーターに乗る。
3階のりぃ君の部屋のドアを借りた鍵であける。
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