先生に囚われて
もうりぃ君の顔が見られなくて、唯一タオルケットから出ていた目も気づいたらギュッと閉じていた。


……やっぱり、聞かなきゃよかった。

何も聞かずにりぃ君の腕の中で寝て、今日を終わりにすればよかった。

せっかく、りぃ君が先生になった理由を知って嬉しい気持ちになったんだから、

この幸せな気持ちのまま……やめておけばよかった。


返事がないりぃ君に怖くなって、りぃ君に背を向けるために身体の向きを変えようとした。


「ごめんなさいっ、やっぱり」

「歌、こっち向け」


それをりぃ君に阻まれて、さっきよりもきつく抱きこまれる。

作った隙間も全てなくなり、りぃ君のTシャツ越しに鼓動すらも聞こえてきた。



「あいつは彼女じゃないし好きでもない、彼女もいねえ」


りぃ君の鼓動よりも数倍早い私の鼓動も伝わってるんじゃないかと思うくらい、私たちの間に距離はなかった。

それは、りぃ君が埋めようとしてくれてる心の距離を身体にも反映させてるみたいだった。
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