先生に囚われて
「……ううん」

何でもない、と首を横に振る。

そうか、とりぃ君の右手がハンドルに戻って行きそうになるのを私が左手が制する。


軽く握るとりぃ君が指を絡めるように握り直した。


ぽよんぽよん公園を過ぎて少し行くと、私と恭弥が育った施設"あおぞら苑"が見えてきた。

見慣れたその平屋の建物と手前に広がる園庭。


「……寄るか?」


りぃ君が聞いてくれたけど、それには首を横にゆるく振った。

まだ、ここには来られない。

苑の門を通り過ぎるとき、外に向けてきゅうりとなすで出来た馬と牛が飾られているのが見えた。


早く帰ってきてね、戻るときはゆっくりと。


園長先生が作ったのかなぁ。

元気かな……腰の具合はどうだろう。

早く会いたいな。



でも、ここに寄るより先に行きたいところがあった。


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