先生に囚われて
だから。
このまま恭弥と付き合っていれば、いつかはりぃ君と女の人が一緒にいるところを見ても何とも思わないようになるのかも、とそんなことを期待していた。

馬鹿だった。

幼稚で浅はかな考えをしていたんだ。


恭弥の気持ちも考えず、その心を傷つけることだとも思わずに、私はひどいことをしていた。




「歌ちゃん、恭くんが迎えに来てくれるの何時だっけ?」

部屋から出てリビングに顔を出したタイミングでお母さんが声をかけてきた。


「えっとね、あと30分くらいで仕事終わるはずだからそのあとすぐに……」


ーーカンッ!カラカラカラ……。


「あ!」

歩きながら指輪の通ったネックレスを首にしようとしていたら、手が滑って床を転がってしまった。


「あら大変!指輪が……っ」

お母さんの足元まだ転がった指輪を拾って渡してくれた。


「お母さんありがと!よかった〜」

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