先生に囚われて
突き刺さる視線に困惑して眉を下げながら、そっと口を開く。


「……先生の、家まで着いてきてしまって……。怒られて追い返されたところです」

りぃ君が目を見開いたのを視界の端で捕らえたけど、私は真っ直ぐに女の人を見つめていた。


「あらそう、ならさっさと帰りなさい。この人にちょっかい出さないでね」

最近の子供は図々しいのね。彼女はそう言うと、

フッ、と口紅が綺麗に塗られた形のいい唇を歪ませて笑った。



「はい、すみません。もう帰ります」


私の答えに女の人は満足したのか、りぃ君の首から手を放して、今後は腕に腕を回して絡み付いた。


眉間に皺をしっかりと寄せて不機嫌を顔に出すりぃ君は、彼女ではなく私を睨むように見ていた。

不機嫌な理由は、

彼女がここにいる事なのか。

私の態度なのか。


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