先生に囚われて
それも、りぃ君が教師になって引っ越してからは一度もなかったらしいけど、私がこの前エントランスで見たことを思えば、りぃ君とは会えなくてもこっちにも何度か来ていたのではないだろうか。

……そんなに、りぃ君のことが好きなんだ。


俯く綾子さんの表情はとても悲しげで、儚く見えた。

りぃ君に彼女がいないなら、まだ自分にも可能性があるのでは、と綾子さんは何度も足を運んだらしい。


綾子さんの気持ちはとてもよくわかった。

いつもりぃ君の周りにはたくさんの女性がいて、それを見ているのは本当につらくて。

心が締めつけられるように痛かった。


だけど、二人きりのときは楽しくて、優しくて、一緒にいられるだけで幸せだった。


一度知ってしまったらもう抜け出せなくなるほど、りぃ君の側は甘くて……苦しかった。


だから、特定の人がいないのなら、いつまでも自分の気持ちに区切りをつけられなかったんだ。

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