先生に囚われて
「なんだよ、松本」

りぃ君が不思議そうに胡桃に聞き返す。



「サエちゃんはなんで先生をやってたんですかぁ?」



胡桃の質問にギョッとしたのは私だけで、周りの生徒はとくにその質問の意図を不思議がることもなく、「たしかにー」「なんで仕事があるのに2年間だけ?」とその答えを知りたがった。

胡桃!なに言うの!

胡桃のほうに視線を投げると、ニッと可愛く笑った胡桃と目が合った。




「ん?あ〜、まあもう別にいいか、最後だし」



そんなことを言ったりぃ君が、スラックスのポケットに入れていた右手をスッと前に伸ばすと、





「こいつがここにいたから」



とあろうことか、クラス中のみんなの前で私を指差してきたのだ。


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