先生に囚われて
廊下を一人走っていると、少し先に人の後ろ姿が見えた。


あ、あれって。

目立つ姿のその人に声をかけようと、さらに小走りで近づいて行く。



「サエちゃーん!!」


肩越しに顔だけ振り返ったサエちゃんに、歌の事を聞こうと思った。


「ちょっと、聞きたいんだけど――…」


だんだんと近づくにつれて、ある事に気付く。

それは、サエちゃんが1人ではないという事。


サエちゃんの身体に隠れてよく見えないけど、サエちゃんは誰かを抱えて、いる?


しかも、抱えられている誰かはサエちゃんの首に手を回して、肩の辺りに頭を押しあてているみたいだった。

うわぁ……、いいのかよ?
ここ学校だけど。

明らかに見て取れる親密そうな雰囲気に、これ以上近づいてもいいのかと、迷う。



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