先生に囚われて
「……お前」


先生の脳天に響くような低く艶のある声が、口を突いて出た瞬間。

「先生、遅れてごめんなさい」

とりあえず謝ってみる。


先生は、眉間に皺を寄せて何か言いたそうだったけど、他の生徒が出した声によって中断された。



「サエちゃーん!早く自己紹介の続きしてよっ!!」


声を発したのは化粧の濃い派手なグループにいる女の子。

彼女のグループは私が嫌いらしく、たまに突っ掛かってくる。

まあ、私も嫌いなんだけど。


「彼女は?彼女いるの〜!?」

「あ〜、別に特定のやつはいねぇなー」


軽っ。

派手な女の子たちがきゃあきゃあと声を上げているのを聞き流し、
先生を見ているとその後ろにある黒板に文字が書いてある事に気付いた。


あ、先生の名前か……。



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