先生に囚われて

りぃ君が戸惑う私の手を引いて玄関を出ようとした時、なっちゃんが慌て声をかける。


「おいっ、待て待て理一！何ふつうに歌を連れてこうとしてんだよ〜！」


「"また女連れ込んだのかよ"」

「……は？」

「"今すぐ追い返せ"」

「………あ」


さっき自分が言った言葉だと理解したなっちゃんは、唖然として固まってしまった。


「しょうがねえから、お前の言うとおりにしてやるよ」

意地悪な顔でフッと鼻で笑うりぃ君に、なっちゃんが焦りだす。


「あ、あの時は歌だって知らなかったんだよっ！歌だったら返す必要なんてねえよ、頼むよ理一！俺まだ歌といてぇんだけどっ」

必死にりぃ君にお願いするなっちゃんを、りぃ君は華麗に聞き流し、家を出ようとする。


情けない声で訴えるなっちゃんがあまりに可哀想で、閉まるドアに向かって叫ぶ。


「なっちゃん！私の携帯番号、変わってないからっ！」