先生に囚われて
「ごめんなさい……っ」

「……うん、なにが?」


背中に回された手が優しくなだめるように動き、ゆっくりと言葉の先を促される。


「学校……りぃ君、お仕事なのに、サボらせて」


謝らなきゃ。
ちゃんと言葉にしなきゃ。

そう思うのに、私の口から出るのは震えてしまいそうな声を必死に抑えて途切れ途切れたな単語だけ。


不安で身を堅くする私の頭上でりぃ君の声が優しく響く。


「お前のせいじゃない。俺が自分の意志でそうしたんだ」

「で、でもっ」

「でもじゃねえの」


強く抱きしめられていた腕の力が緩み、2人の間に隙間ができると途端に不安が胸を占領する。

顔を上げて恐る恐るりぃ君の顔色をうかがうと、


「ふっ、そんな顔すんな」

「……え?」

「不安です、って顔に書いてある」

「………」



「俺がしたかったの。俺が、お前といたかったから連れて帰った」



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