先生に囚われて
「わかったか?わかったなら返事」

「……っ、はい」

りぃ君が眉を少し下げ綺麗な顔に困ったような色を浮かべて優しく微笑んだ。


……ああ、好きだな。

私はこの人がどうしようもないくらいに、好きなんだ。

気持ちを伝えられたら、どんなに嬉しいだろう。

どんなに幸せだろう――…。




再び走りだした車はあっという間に私の家の前に着いた。

りぃ君と2人でられる時間を手放すのはなんとも寂しいけれど、今日は幸せな言葉と温もりをたくさんもらったから。

これでまた明日から頑張れる。


シートベルトに手をかけながら、りぃ君の方は向かずに声を発する。


「りぃ君、今日はいっぱい迷惑かけてごめんね……。それから、……ありがと」


うまく、言えただろうか。

それだけ言ってドアを開ける。
足を踏み出そうとしたら、手首を掴まれて動きをとめた。

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