先生に囚われて
「素直に聞き流してくれればいいものを」

そうぼやきながら、再度交わったその視線には、先ほどまでの困惑や戸惑い、躊躇いなどの色は見えなかった。

今、感じるのは挑発するような鋭い視線。

そこからは堂々と勇ましい、なにものにも屈しないような意志の強さが見てとれて、
あまりにも彼らしい表情に思わず見惚れて動きを止めていた。



そして、惚けている私の隙だらけの唇にりぃ君の唇が押しあてられて、食べられるようなキスをされた。

「……んっ、ぁ」

息も絶え絶えにりぃ君を見ると、唾液に濡れる自身の唇をペロリと舐めながら言い放った。




「俺にとってはこの世でもっとも邪魔で鬱陶しい、でも……大切なものだ」



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