【短】糸のないマリオネット
はしゃぎ疲れたクゥは、みんなから少し離れて窓辺に座った。
空はよく晴れていて、月が隠れる心配はなさそうだった。
みんなが楽しそうに踊るのを見て、部屋の隅に目をやると、見たことのない人形が座っていた。
「キミ、だれ?」
近づいてみると、その木の人形は、他の人形とは全く違っていた。
まん丸の頭には三角の尖った鼻と小さくて丸い目がついていて、赤いとんがり帽子をかぶっている。
体の形は人間に似ているけれど、服を着ていないし、肩や肘や膝が丸い玉で、腕や足は棒でできている。
「どうして、
みんなといっしょにおどらないの?」
その人形は、ようやくクゥの方を見た。
『踊れないからだよ。』
人形は寂しそうにそう言って、手足を不自由そうに動かして見せた。
『僕は、マリオネットだから。
この糸があるから、
人間がいないと、
ここから一歩も動けないんだ。』
暗くてよく見えなかったけれど、マリオネットの体にはたくさんの糸が絡みついていて、糸は上に向かってのびていた。
座っているように見えたマリオネットは、上から吊されていた。
「でも、みんなといっしょのほうが
たのしいよ?
行こうよ!」
『無理だよ。無理なんだよ。』
「みんなといっしょに
おどりたくないの?」
『踊りたいよ。だけど・・・』
「じゃあ、かんたんだよ!」