【短】『鏡』
僕は今、あの研究室に立っている。
目の前にあるのは、人間の形をした冷たい器。
この中に骨格や中枢組織(メイン・コンピュータ)を入れて、知識を入力する。
そうすれば、完成だ。
父さんと母さんとの『夢』を受け継いでから、二年の月日が流れた。
今、ようやく『夢』が叶おうとしている。
ピピッピピピッ
組み込むのは、僕の持つ最低限の知識と、自己進化プログラム。
組織はどんどん発達して、やがて、より優れた知能を持つ子孫を創っていく。
ピ―――――ッ
音と共に、『それ』の入ったカプセルが開いた。
『それ』は目を開き、軋む身体を起こしてカプセルから出た。
背は僕より少し低い。
モデルは、部屋に飾ってある写真の中の母さん。
「やあ。僕は和也。君は?」
「・・・翼・・・」
いくつかの僕の質問に、翼は設定した通りの答えを返す。
成功だ。
遂に僕は、『アンドロイド』の第一号を完成させた。