【短】『鏡』
父さんが死んだのは、それから丁度一ヵ月後のことだった。

「和也・・・『核』は完成した・・・あとはお前に・・・全て任せ・・・から・・・『夢』を・・・叶え・・・」

それが、父さんの最後の言葉だった。


五日間は泣き続けた。

すると涙は枯れてしまって、残ったのは『虚無感』だった。

父さんは、極度の温度変化によるショックで死んだ。

父さんは、気分転換に外の空気を吸いたいと言って、僕と一緒に玄関を出た。


その直後に、倒れた。


これまでも、父さんの身体には相当な負担がかかっていた。

『核』の機能を保つために、毎日四十度以上、日によっては五十度にもなる部屋に、換気もせずにこもっていたのだから、無理もない。

と、医者が言っていた。


父さんも、死んだ。

あの部屋にこもっていたせいで母さんが死んだことを知っていて、なのに、同じ死に方をした。

母さんとの『夢』を受け継いだ結果、死に方まで受け継ぐなんて・・・皮肉なものだ。
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