女子高生名探偵の事件簿
「雪が深いですね。」
リサが言った。一晩かけて積もった雪は気を抜いていると足をとられてしまいそうだった。
「これは結構難儀だな。」
「ねぇ。なぜ津村さんはこんなトコに一人できたのかしら。」
ユミとリサの声が真っ白な銀世界に響いた。
「古川さん。今朝の不振な電話とは?」
ヒカルが先頭を行く古川に尋ねた。
「ああ・・・。」
古川が言葉を濁した。
「あれはね。今朝。津村から電話があったんだ。」
古川は息をのんだ。雪を踏む「シャリっシャリ」という音だけの世界で古川の息をのむ音は以上ともいえるほど大きくきこえた。
「『武者だ。ついに目覚めたんだ。血を求めている。あ。来たっ。』っていう電話がね。」
古川の表情は言い終わるまで全く変わらなかった。
「なに、それって襲われたってコト。」
「いいや。津村の部屋には争った形跡や血の跡なんてのは全くなったね。」
ユミに古川が言った。
「で。なぜ、この観測棟に行くの?」
ふいに後ろのほうから声がした。本館から立嶋が走ってきた。
「立嶋さん。どうしたんですか?」
「いやね。君たちが観測所に行こうとするのが見えたからね。何かあったのかなぁって思ったんだよ。」
「あ。実はですね・・・。」
「着いたぞ。」
ユミがしゃべろうとするのを古川が遮った。
『ギャー』
津村の叫び声らしきものが建物の中から聞こえた。
「津村―。」
古川が研究所に飛び込んだ。
「津村―。どこだー。」
古川が叫んだ。返答はない・・・。
「キミらは2階を探してくれ。私は地下を・・・。」
古川はそういうと階段を駆け下りた。
「行こう。みんな・・・。」
立嶋はそういうと足を踏み入れた。
「研究だけするトコなんでしょ。なぜ、こんなに広いの?」
ユミがいった。
「昔はここに泊り込んで研究をしていたんだって。その後にあのペンションを作ったから。」
立嶋はボソッと行った。
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