女子高生名探偵の事件簿
「どうしたの?」
ヒカルがいった。オーナーの書斎は寒く、息は白くなった。
「三田というヤツ・・・。外部犯っていってたけど・・・。どうだ?」
「うん。事件が起きた後、あの観測所を見渡してみたけれど足跡はなかったわ。外部犯って可能性はなさそう。」
「あそこには津田さんって人の足跡しかなかった。ようするに、あの観測所は・・・。」
「密室・・・。」
・・・。
二人の中にも沈黙が流れた。冷たい書斎の空気の中に二人のはく白い息が二本の煙柱を立てていた。その様子がなんとも物悲しい。
「で・・・。ヒカル。」
タケシタが沈黙を破った。
「密室のトリックはわかったん?」
「え。なぜ、私に聞くわけ?」
ヒカルが首を傾げた。だが、その反応をタケシタが聞き流した。
「足跡はあったんだよね。」
タケシタがたずねた。
「うん。津田さんのがね。靴もなかったし・・・。ただ…。」
ヒカルがうなった.
「ただ。なんだ…。」
「あの足跡が津田さんのものだという確証がないわ。あしあとなんて、まだ、あの死体から、靴を剥ぎ取って確かめてみたわけではないもの・・・。」
ヒカルがしゃべるのをタケシタはだまってきいていた。ただ、その表情は自然にゆるくなっていく。
「何ニヤニヤしているの?」
ヒカルの厳しい指摘にタケシタが顔を引き締めた。
「いや。別に・・・。」
「何もないのにニヤつくなんて。ただの変体ね。」
「バカ。ただ・・・。だんだん成長してきたなぁってさ・・・。」
「ハッ?なんて言った?」
「あ~。なんでもない。で…。」
「だから。たとえ、あの津田さんの足跡だったとしても、誰かが津田さんの靴を履いて歩けば問題はないでしょ・・・。」
ヒカルがいつになく強い調子で言い切った。
「ふーん。じゃあ犯人の目星は?」
タケシタが表情を変えずにたずねるのでヒカルのテンションは大きく挫かれてしまった。
「え。うん。そうねぇ。動機の面から迫っていくと、どう考えてもあの、なんとかっていう学園の連中しか考えられないんだけど…。それに、この山荘に関しても熟知していなきゃいけないだろうし・・・。」
「なるほど、推理は結構。では、現場にでも行ってみようか。」
タケシタは言い切った。

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