好きだから。 *短編*


実際大きい方はしなかったものの、トイレの鏡で髪をなおす。

なおすって言ってもただの栗色のパッツンロングだからたいしてなおすとこもない。


宏樹に比べてかなり童顔な自分を見て一つため息。

「…戻ろ。」


落ち着きを取り戻しさっきの部屋に戻る。


部屋を開けると誰もいない。


「…あぁ授業か。」


時計を確認して椅子に座る。


宏樹がいなくてホッとしたのか寂しいのかよく分からない気持ちに襲われる。


またマンガの続きを読もうとパラパラめくっていると勢いよくドアが開いた。


「ハ、ハル…っ!」


そこには数分前まできちんとワックスをつけてきまっていたはずのパーマの髪がボサボサで、今日はカチッときれいめなコーディネートをしていたのに台無しなくらいぐちゃぐちゃに着こなしている宏樹の姿が。


「え、どうしたの?マラソンでもしたの?」


息を切らしたまま私に近寄ってきた宏樹は、右手に持っていたコンビニの袋を差し出し、


「さっきはごめん。悪かった。傷ついたよね。ハル。」


と言いながら私の頭をぽんと軽くなでた。


──ほら、また好きにさせる。


どきどきしている私に、コンビニの袋から肉まんを取り出しくれる。


「ん。食べよ。」


「…ありがと。でも……あんまんな気分!」


嬉しい気持ちでいっぱいなのがばれてもいい!とばかりに満面の笑みで言ってやった。

「えぇ~?!」


眉を八の字にして困ったように笑う宏樹。


会ったことのない宏樹の彼女、美咲ちゃんには悪いなって思うけど、宏樹とのこの時間があたしはやっぱり大好き──。

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