好きだから。 *短編*
しかし、そんな美咲ちゃんに出会ってしまうときがやってきてしまった。
「拓也さん、何でこーんな寒い日にバーベキューなんかするんですか!?」
サークルで知り合い、今では親友となった優香と私がサークルの1つ上の先輩に詰め寄る。
「いや、予報では暖かいはずだったんだよ!」
必死に弁解する拓也さん。
「それ…いつの予報ですか?」
疑いの目をかけると小さな声で『10日前かなっ…』とつぶやいていた。
「まっ!でも飲めば暑くなるって!ほれ!」
と私たちに缶ビールをくれた。
それを合図かのように全員にお酒が行き渡り、代表が乾杯の挨拶を始めた。
「じゃー今からバーベキューはじめます!飲み過ぎ注意!乾杯!」
挨拶とは言ってもこんなもんだけどみんな声をそろえて乾杯する。
「そういえば今日宏樹いないじゃん」
優香があたしに聞いてきて、私もきょろきょろ見回すもいない。
「連絡してみ・た・ら?」
「優香~まさかもう酔っ払ったわけ?」
白い目で見ていると、優香の肩ごしに少し遠くから、宏樹が見えた。
「ん!?宏樹じゃん!……え?うしろの誰あれ…」
横で何か言っている優香の声は何も聞こえず、私はすぐに彼の後ろにいる子が誰なのかが分かった。
──美咲ちゃんだ…。