好きだから。 *短編*
「よっ!」
「おー!宏樹!お前デートで来れないんじゃなかったの!?てか彼女!?」
宏樹が着くと、いっせいにみんながそっちに向かう。
でも、私の足は一歩も動かない。
呆然と立ち尽くしている私に近づいてきたのは宏樹の方だった。
「ハル!俺の彼女!」
「こ、こんにちは…」
私はハッとして、
「あぁ~!美咲ちゃんだよね!いつも話し聞いてます~!ゆっくりしてってね!」
いかにも社交辞令な言葉を並べ笑顔で言ったつもりだった。
「ん…?ハルどうした?目、うるうるしてね?」
泣かない
泣かない
泣かない
絶対泣かない。
「昨日寝たの遅くってさ~さっきまででっかいあくびしてたのよ!」
「そうそう!俺のグーが入りそうなくらいでっけー口あけて!宏樹も彼女も向こうに酒あるからとってこい!」
とっさに嘘をついた私を助けてくれたのは拓也さんだった。
「…拓也さん、ありがとう。」
「おう。ちょっとここ離れるか!」