また、恋する
「意味を聞いてなかったから」
強い視線で、揺るぎない口調であたしを真っ直ぐ見る、この人を知らない。
「意味?」
「『さよなら』の」
スグルさんの瞳が陰る。
「そのままの意味だよ。もう傍にはいられないし、いたらいけない。分かるでしょ?」
冷たい口調は確かにあたしの口から紡がれるのに、他人の声のように聞こえた。
「分からない。分かりたくない。眞琴、一緒に居たい」
それでも真っ直ぐに投げかける真摯で透明な瞳。冬の景色に溶けてしまいそうな冷たい程綺麗な顔は、あの時と変わらず優しい表情を崩さないまま。