また、恋する
「…帰って」
あたしは立ち尽くすスグルさんを横切って家に向かう。もう、二度と合う事はない。そう意志を込めたのに、
「っ!!!」
捕まれた腕に、否応なしに向かい合う、冷たい瞳。
「帰らない」
「帰って、手を離して」
「どっちも聞けない」
冷たさの中に確かに含む熱が、あたしを狂わす。
「話す事なんてない。優しいだけの感情なんてもう沢山」
声を荒げたあたしの手を引いたのは力強い腕だった。
息がかかる程の近距離、優しい笑顔を常に装備するその端正な顔は今、表情を消して、ただこんな時でも綺麗だ。