俺様彼氏と空手彼女2
ガラッ
「…あ」
引き戸の開く音で我に返ると、すでに目の前には驚いた表情の葵がいて。
私は慌てて涙を拭った。
「牧瀬先輩…?」
葵の後ろで、瑞代さんの驚いたらしい声がした。
「ごめんなさい…。箸、忘れてたから届けに来たんだけど…、その…」
告白シーンを聞いてしまい、なんだか申し訳ない気持ちになり、もごもご口籠もりながら言い訳をする。
うぅ、どうしよう…。
気まずいよぉ…。
「…そうか。」
だけど葵は、ふっと僅かに笑うと何事もなかったかのように私の頭に優しく手を乗せた。
そして、ゆっくり撫でてくれた。
「葵…」
「ん?」
「…なんでもない」
「そうか?じゃ行くか」
にっこりと優しい笑顔に、私はまた泣きそうになって。
俯いて、唇を噛んでぐっと堪える。
「…っ」
だけど、このまま教室に戻りたくはない。
震える唇を必死に動かして、瑞代さんの方へ向き直った。