陰陽(教)師
生徒の自主性を尊重する、のびのびとした校風を持っていると言える。

そんな学校だから、入学希望者も多い。

自然と、学生のレベルは高くなる。

そしてそれが高い進学率につながるという、理想的な連鎖が、ここ杉沢東高校では成立していた。

しかし男はその校舎を眺めて「なんてところ」と言った。

「目に耳に、鼻にまで妖気が伝わってきやがる」

男は再び鼻を鳴らした。

「どうりで俺が呼ばれたわけだ」

彼は本日付でこの杉沢東高校に赴任した、新任教師であった。


―――――――――――


男は校長室で着任の挨拶をした。

それを受ける校長の顔には、緊張の面持ちがあった。

笑顔を浮かべる男の方が余裕を持っていた。

立場が逆転したやり取りを終えると、校長は一度、咳払いをした。

「では先生は今日から、ここ杉沢東高校の教師となります」

ですが、と校長は言葉を続けた。

「先生が着任された理由は、私には理解できない世界のものです」

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