陰陽(教)師
校長の額には、いつの間にか大粒の汗が浮かんでいた。

「私もできるだけ協力いたしますが、『活動』においては、こちらの矢尾先生の指示に従うようにしてください」

校長は側に立つ、一人の女性教師を指した。

「安心してください」

男は笑みを浮かべたまま言った。

「そちらに御迷惑はおかけいたしません」


―――――――――――


数分後、男は矢尾女史と共に廊下を歩いていた。

「少し棘のある言い方だったんじゃないかしら」

矢尾は男を見上げながら言った。

二人の身長差は、かなりあった。

「そうでしたか」

「校長先生、顔を青くしていたわよ」

口調は穏やかであったが内容には咎めるものがあった。

「私たちの立場にある者は、なるべく周囲との軋轢を避けなければいけないのよ。わかった?」

「すみません、先生。今後は気をつけます」

男が素直にそう言うと、矢尾は笑顔になった。

「貴方に先生って面と向かって言われるの、ひさしぶりね」

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