陰陽(教)師
矢尾はふくふくと楽しそうに笑った。

ふくよかな体型で、そんな仕草がよく似合う女性だった。

年齢は男よりだいぶ上に見える。

「高校卒業して以来ですから、10年振りぐらいですか」

どうやら男は、矢尾の元教え子であるらしい。

それならば会話の流れは理解できる。

だが、先ほどの校長室でのやり取りは何なのか。

矢尾の言う『私たちのような立場にある者』という意味は。


―――――――――――


二人は【1―C】とある教室の前まで来た。

「ここが矢尾先生が受け持つクラスですね」

「何を言ってるの」

男の言葉に、矢尾はまたふくふくと笑った。

「貴方が受け持つクラスでもあるのよ。貴方は副担任なんだから」

矢尾は教室のドアを開け、中へ入った。

男も後に続く。

それまで教室の中は生徒達のお喋りでざわついていた。

しかし二人が教室に入ると同時に、そのざわめきは止んだ。

「はい、それでは新任の先生を紹介します」

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