陰陽(教)師
男はその女生徒に向かってにやりと笑った。

「よく間違えられるんだけどな、違う」

男は再び黒板に向き直ると、名前の上にルビを振った。

「こう読むんだ」

【あべはるあき】

ルビはそのように振ってあった。

「ま、口で言うと平凡な名前だよな」

男、いや晴明のあっけらかんとした物言いに、クラスのあちこちから笑いが起こった。

「でも、おかげで名前はすぐに覚えてもらえる。みんなもう覚えたよな」

「なぁ、センセー」

教室の中央あたりで手があがった。

その席にいたのは一人の男子生徒。

ふわりとしたクセ毛の持ち主だ。

「今の自己紹介って、センセーの持ちネタ?」

今度は爆笑が教室内を包んだ。

その爆笑をきっかけにしてあちこちで無駄話が始まった。

いったん火がついたそれは、なかなか収まりそうになかった。

そんな中、一人の女生徒が席から立ち上がった。

色白で、前髪を切り揃えたストレートヘア。

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