陰陽(教)師
川太郎は素早い出足で大吾の懐に潜り込むと、正面から腰に組みついた。

一方、川太郎の突進を受け止める形になった大吾は、腰を低く落として防御の体勢をとった。

そしてそのまま腕を伸ばし、川太郎の甲羅の縁をつかむ。

両者の動きは一旦そこで止まった。

「こりゃ長い相撲になりそうじゃのう」

善吉はヒゲを撫でた。

両者の体格差は歴然。

身長は40センチ、体重に至っては倍以上の差があるだろう。

体格は大吾が勝るが、体勢は川太郎の方が有利であった。

だが、攻める川太郎は大吾の巨体を持て余し、守る大吾は攻めの糸口が見つからずにいた。

「要、大丈夫かなぁ」

鈴子は不安気に言った。

庭から部屋へ上がった善吉と明菜も、固唾をのんで取組を見守っている。

明菜は胸の前で両手を合わせ、祈るようにしていた。

「ん?何やってんだよ、先生」

嵩史が声をあげた。

見ると晴明は、廊下にあぐらをかいて何かをしていた。

「折り紙?」

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