陰陽(教)師
「べ、別にオレは…」

弁解しようとした嵩史だったが、明菜の舌打ちが全てを打ち消した。

「明菜ちゃん、怖い…」

鈴子は顔を青くした。

「委員長は、女王様でもありか」

晴明は、再び善吉に聞こえない声で言った。

『お孫さんはSですね』

そんな台詞、実の祖父には絶対に言えない。

その善吉は、そんな晴明の様子や孫たちのやり取りには目もくれず、じっと大吾と川太郎の取組みを見ていた。

「動きが止まったの」

善吉の言葉通り、両者は組合ったまま動かなくなっていた。

陽はとうに落ち、辺りには染み込むような冷たい空気が充満している。

にも関わらず、川太郎は全身に汗をかいていた。

対する大吾は、汗ひとつかいてない。

「こりゃ要の方が有利か?」

嵩史がつぶやいた時、

「要の体…」

鈴子が何かに気付いた。

「なんか煙が出てるよ」

見ると大吾の体のあちらこちらから、白い煙が立ち昇っていた。

「あれは水蒸気じゃな」

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