陰陽(教)師
晴明は大吾の傍らに立った。

「どうだ?」

「強いですね」

晴明の問いかけに、大吾は短く答えた。

口調は淡々としていたが全身から噴き出す水蒸気が熱戦を物語っていた。

「トラックを持ち上げる怪力をもってしても、勝てそうにないか」

「力うんぬんじゃないですね。腰が重すぎるんですよ」

まるで川太郎の足が地面に貼り付いているようだと、大吾は語った。

「河童特有の妖力かもしれないな」

「相撲用のですか」

「どんな妖力があってもおかしくはないさ」

言いながら晴明は、肩へと指先を伸ばした。

とまっていた小鳥が、くわえていた何かを晴明の指先につける。

それは小さな白い粒だった。

「少しかがめ」

晴明の言葉に大吾が言われた通りにすると、晴明は指先の粒を大吾の額へとつけた。

大吾は体勢を戻した後、額に手をやろうとしたが、寸前で止めた。

「これは、最終手段ですね」

どうやら粒の正体がわかったらしい。

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