陰陽(教)師
「要を信用してないわけじゃないんだがな」

「いえ、チャンスはもう一度、頂きましたから」

大吾は頭を下げた。

「それに勝たなければ、三池は元に戻せません」

「理解が早いな」

「年だけはくってますから」

「なるほど」

晴明は小さく笑った。

大吾の目も、細くなったように見えた。

「どうしたんです?」

振り向くと、明菜が不思議そうな顔をして立っていた。

「いや、別に」

晴明は首を振った。

明菜はお盆を手にしていた。

水がなみなみつがれたグラスがふたつ、乗っている。

「力水か」

大吾はひょいとグラスを取った。

ゴツゴツとした岩の手で握ったのにも関わらず、不思議とグラスは割れなかった。

また、その顔には口が無いのに、大吾がグラスをあおると、中の水はあっという間に消え失せた。

同時に、体のあちこちから出ていた水蒸気も、収まっていった。

「どういう仕組みなんだろ?」

「さぁ?」

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