陰陽(教)師
大吾の様子を眺めていた鈴子と嵩史は首をひねった。

一方で明菜は、川太郎のもとへ歩み寄った。

無言でグラスの水を差し出す。

「もらおう」

川太郎はグラスを受け取ると、大吾と同じように一気に飲み干した。

「お前の仲間は強いな」

グラスを戻しながら、川太郎は言った。

「だが、俺は絶対に勝つぞ」

「そうなったら、次は私が相手になります」

「お前が俺と相撲をとるというのか」

「誰が相撲と言いましたか!」

明菜は顔を赤くした。

「そうか、それは済まなかった」

川太郎の声に、笑いが混じった。

河童なのでその表情をうかがい知ることは難しかったが、声と同じく、顔も笑ったように見えた。

「では再開しようか」

晴明がそう言うと、川太郎と大吾は再び組み合った。

水入り後の取組みは、水入り前と同じ体勢から始まる。

再び長い取組みが始まるかと思われたその時、大吾の胴を抱えていた川太郎の左腕が急に縮んだ。

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