陰陽(教)師
同時に、川太郎の右腕が伸びる。

「尻子玉を抜く気だ!」

嵩史が叫んだ。

だが次の瞬間、大吾の額の粒が光り輝いた。

大吾はうおおお、と雷鳴のような叫び声と共に川太郎の体を持ち上げ、後方へ放り投げた。

川太郎は一本釣りされた魚のように宙を舞い、背中から地面に叩きつけられる。

「やったー!」

鈴子は歓喜の声をあげ、嵩史を抱えて大吾のもとへと駆け寄った。

明菜も笑顔で後に続く。

「よくやった」

最後にきた晴明が、大吾の背中を叩いた。

「でもよ、なんでああもあっさり…」

川太郎に勝てるようになったんだと、嵩史は言いたいようだった。

「お仏飯を額につけたからさ」

「お仏飯(ぶっぱん)?」

晴明の言葉に、鈴子は首をかしげた。

「仏様に供えた御飯のことをお仏飯という。それは、対河童用の最終兵器なんだ」

河童はお仏飯に弱い。

そんな話は全国各地に伝わっている。

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