陰陽(教)師
静岡県伊豆にはお仏飯を食べた子供と相撲をとった河童が、呆気なく負かされた話がある。

また千葉県中部にはお仏飯をすすめられた河童が逃げ出したという話が伝えられている。

「お仏飯を額につけとけば、河童を負かせるなんて話もある」

晴明は己の額を指した。

「さっき式神にお使いを頼んだっていうのは、お仏飯を取りに行かせたってことだったのね」

鈴子が合点がいったという感じでうなずいた。

「よくそんなもん用意してあったな」

嵩史が感心したように晴明を見た。

「お仏飯は、河童以外の妖怪にも有効だからな。常に供えてあるのさ」

晴明は当たり前という感じで言った。

「さすが安倍晴明(あべのせいめい)」

「晴明(はるあき)だ」

からかうような嵩史の一言を、晴明はやんわりと訂正した。

「さて」

晴明が川太郎の方を向くと、川太郎はうめき声をあげながら立ち上がるところだった。

「どうする、川太郎。不服なら今度は俺が相手になるが?」

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