陰陽(教)師
「やめておく」

川太郎は腰を押さえながら首を振った。

「腰をしたたか打った。しばらく相撲は無理だ。それに、貴様相手に勝つ気はせん」

「じゃあ、オレの尻子玉は…」

「約束通り返そう」

「よっしゃー!」

これで戻れる、と嵩史は大喜びした。

「では受け取れ」

川太郎は左手を差し出した。

手の上には尻子玉が乗っていた。

しかし誰もそれを受け取ろうとはしなかった。

「どうしたんだよ、誰か尻子玉を受け取ってくれよ?」

嵩史は怪訝そうに言いながら、全員の顔を見回した。

「だってねぇ…」

鈴子が苦笑いした。

「三池の尻の近くに入っていたんだろう?」

大吾は困り果てたように腕を組んだ。

「なんだよ、汚ぇから触りたくないって言うのかよ!?」

「そういう訳じゃないけど…」

明菜は口では否定したが表情は肯定していた。

「テメーら、それでも仲間か!?」

嵩史は、これでもかと言わんばかりに、毛を逆立てた。

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