陰陽(教)師
「先生、コイツらの代わりに尻子玉を受け取ってくれよ!」

晴明は肩にとまった小鳥をつついて遊んでいた。

「うぉい先公ーッ!?」

「ワシが受け取ろう」

収拾がつかなくなった場を納めたのは、善吉だった。

「お祖父さま、どこへ行ってらしたの」

「これを取りに行ってたんじゃ」

善吉は左手に下げていたビニール袋を上げた。

袋には、みずみずしいキュウリが、どっさり入っていた。

「元はと言えば手を持ち出したワシの責任。せめてもの詫びじゃ、受け取ってくれ」

善吉はキュウリを川太郎に差し出した。

言うまでもなく、キュウリは河童の大好物だ。

「そ、そこまで言うなら…」

川太郎は目を輝かせ、よだれを垂らしながらキュウリを受け取った。

それと引き換えるように善吉は尻子玉を受け取った。

「本当にすまんかった」

「構わん。左手はちゃんと返してもらったしな」

川太郎はさっそく一本のキュウリをかじりながら答えた。

< 159 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop