陰陽(教)師
放課後の教室は夕闇に照らされていた。

教室内にいるのは教壇の晴明と、席に座っている三人の生徒のみ。

矢尾は彼等を置いて職員室に戻っていた。

「センセー」

三人のうちの一人が口を開いた。

HRで騒ぎのきっかけを作った、クセ毛の男子生徒だった。

「これって、オレらと先生の顔合わせだろ?」

アーモンド型の大きな目が、教壇の晴明をとらえた。

「他の生徒に見られたらヤバくね?」

「安心しろ」

晴明は言った。

「結界は貼ってある。事情を知らない人間がこの教室に来ることはない」

男子生徒は短い口笛を吹いた。

「さすが安倍晴明(あべのせいめい)」

「晴明(はるあき)だ」

男子生徒の挑発めいた口調を、晴明は笑って受け流した。

「でも先生は陰陽師ですよね?」

律義に手をあげて発言したのはストレートヘアの女生徒。

委員長だった。

「矢尾先生に聞いてたか?」

晴明の問い掛けに、委員長は首を振った。

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