陰陽(教)師
「じゃあな」

「待て待て」

身をひるがえした川太郎を、善吉は呼び止めた。

「尻子玉はどうやって戻したらいいんじゃ?」

「簡単だ。尻子玉を飲ませればいい」

川太郎はそう言うと、大きく跳躍して、白壁の塀を乗り越えていった。

「やっと終わったわい」

善吉は肩を回すと、晴明の方を向いた。

「先生にはお世話になりました」

善吉は晴明に向かって深々と頭を下げた。

「自分は特に何も」

晴明は首を振った。

「働いたのは、生徒たちです」

それに、と晴明は言葉を続ける。

「まだ全部は片付いてません」

ちらりと嵩史を見た。

「おお、そうじゃ。明菜の友達を元に戻さなくてはのう」

善吉は尻子玉を嵩史の口もとに近づけた。

「い、いやちょっと…」

嵩史は顔をそむけた。

「なんじゃ、元に戻りたくないのか?」

「いや、戻りたいのは山々なんだけど、尻のとこから出たもんを飲むってのは…」

「仕方ないじゃろ」

< 160 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop