陰陽(教)師
「そのネクタイにセーマンの印が入ってるのが見えたので」

「よく見てるな」

晴明は己のネクタイをつまみながら笑った。

黒地のネクタイには、ネクタイの生地より薄い黒の糸で、五角形の星形、つまり五芒星が刺繍してあった。

陰陽師。

陰陽道という、占いや呪術を含む業を身につけた者と言えばわかりやすいだろうか。

平安時代には、朝廷に仕える役職のひとつでもあった。

セーマンは、その陰陽師が用いる代表的な呪術図形、いわば象徴のようなものである。

近年、小説や漫画、ドラマや映画でも語られるようになった稀代の陰陽師・安倍晴明を祭る京都の晴明神社の提灯にも、セーマンは描かれている。

「やっぱり晴明(せいめい)じゃん」

男子生徒が鼻を鳴らしながら言った。

「ちょっと、いい加減にしなさいよ」

最後に口を開いたのは、金髪の女生徒だった。

「なんだよ、お前だって最初は読み間違えただろうが」

「そりゃそうだけど…」

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