陰陽(教)師
二人とも、お互いに唇を尖らせた。

委員長が二人の間に入ろうと立ち上がりかけた時、晴明が

「三池嵩史」

と、男子生徒に呼びかけた。

晴明は一冊のファイルを開いていた。

「なんだよ」

嵩史はいぶかしげに返事した。

「お前の正体は猫又か」

ファイルを見ながら、晴明は言った。

猫又とは、年を経た猫が妖怪化したものである。

人語を解し、人に化けるなど様々な妖力を持つ。

尾が二つに別れていることから、猫又と呼ばれている。

「両親も共に猫又か。生まれついての妖怪というわけだな」

「それがどうしたよ」

嵩史は下から晴明を睨みつけた。

アーモンド型の目は、三白眼と化している。

「人間社会で暮らす妖怪一族なら、苦労も多いだろう」

「何が言いたいんだよ、先生」

「そりゃ陰陽師といった連中には偏見もつわな」

「よくわかってんじゃねぇか!」

嵩史は席から跳び上がった。

立ち上がって跳ぶまでほぼ一動作。

< 18 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop