陰陽(教)師
同時に、不審な点も目につくようになった。

何か月も空き家になっていたというのに、家の中が全く荒れていないのである。

クモの巣ひとつない。

不動産会社の管理が行き届いているのか。

しかしそれだとしたら、戸締まりはなぜされていなかったのか。

ヒロシは懐中電灯で床を照らした。

「ホコリひとつねぇや」

最初は呑気にカメラを構えていたヒロシも、さすがにおかしいと思うようになった。

「ねぇ、もう帰ろうよ」

ナナはダウンの裾を握る手に力をこめた。

「お、おう…」

言いかけて、ヒロシはあわてて首を振った。

今日、この家に行くことは仲間にも言ってある。

だからそれらしいものを撮らずに帰ったら、後々なにを言われるかわからない。

尻ごみしたとバレたらなおさらだった。

「も、もう少し撮ってから帰ろうぜ」

ヒロシは自分を奮い立たせるようにして言い、家の奥へ向かった。

やがて二人はとある部屋の前で足をとめた。
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