陰陽(教)師
なぜその部屋で足をとめたのかはわからない。

―何者かによって呼びとめられた―

例えるならそんな感じであった。

ヒロシは部屋を閉ざす襖に手を伸ばした。

ナナはその手をとめようとはしない。

それでいて二人は完全に怯えきっていた。

一刻も早くここから逃げ出したい。

そう思ってるのにそれができない。

自分たちを呼びとめた、何者かの圧力に押さえつけられているようだった。

ヒロシは懐中電灯を持った手で襖を開けた。

部屋は八畳の和室であった。

家具や調度品の類は一切ない。

部屋の向かい側に障子があり、それは月明りを受けて、部屋を白く照らしていた。

ヒロシとナナは、震えながら、部屋へ足を踏み入れた。

その時。

『…じい』

ナナがヒロシの肩をつかんだ。

「ねぇ、なんか聞こえたよぉ!?」

ヒロシは耳をすませた。

『…もじい』

確かにそれは聞こえた。

ヒロシは震えながら懐中電灯で部屋のあちこちを照らした。

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