陰陽(教)師
「そんなに悪い【気】が満ちてるなら、この家自体が妖怪になってるんじゃない?」

鈴子が部屋を見渡しながら言った。

「あたしたち、妖怪のお腹の中にいるんじゃ?」

「考えられるな」

晴明はうなずいた。

「もしかしたらあの老婆は、妖怪化したこの家に操られているのかもしれない」

「死んだ人間の魂を手下にしたってのか?」

嵩史は理解できないといった風に首を振った。

「とにかく、この家をこのままにしておくわけにはいかない」

晴明は口もとを引き締めた。

「力を蓄えれば、この家を中心に被害が出るかもしれない」

「あの婆さんが、人を襲うようになるかもしれないってことか?」

「それもあるな」

「どうするの、先生?」

晴明は携帯の画面をタッチした。

すると、左膝を立てた状態で座る観音像を描いた仏画が現れた。

「先生、これは?」

鈴子は画面を見て、晴明に尋ねた。

< 63 / 204 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop