陰陽(教)師
目を血走らせた老婆、いや巨人の姿に、嵩史は思わず絶叫した。

「家が、最後の抵抗してきやがったか」

晴明が不敵に笑った。

「ありったけの妖気をぶち込んで、仕向けてきたな」

「先生、あんなデカいヤツ、一体どーすんの!?」

鈴子が泣きそうな顔で晴明を見た。

『ひもじい…』

巨人は口の端からよだれを垂らしつつ、一歩一歩こちらに近付いてくる。

「二人とも、俺の後ろに下がれ」

二人は晴明の言葉に従った。

「陽を以って陰を克(こく)す」

晴明は右手で印を結ぶ。

人差し指と中指を立て、胸の前で構える。

「バン」

そう唱え印を結んだ手で横一文字に線を引いた。

「ウン」

次は左斜めに降ろす。

「タラク」

次は右上に上がり

「キリク」

右手に降ろし

「アク」

最後に左上に上げると、その軌跡が五芒星となって出現した。

それは瞬く間に巨大化し、巨人に向かって突撃すると、津波のように巨人を飲み込んだ。

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