陰陽(教)師
「ご家族が次々と亡くなり、奥様があのようなことになっても、私には何もできず…」

男は目を伏せた。

「気にするな、お前のせいじゃない」

「はい…」

晴明の言葉に、晴明は着物の袖で目頭を拭った。

「それでは、これで失礼いたします。皆さま、本当にありがとうございました」

男は最後にもう一度頭を下げ、そのまま姿を消した。

「先生、結局なんだったんだよ、アイツは」

「彼ならそこにいる」

晴明は家の壁を指した。

嵩史が目をやると、そこには一匹のヤモリが張り付いていた。

ヤモリは壁を這いずり、今度こそ本当に姿を消した。

「ヤモリは【家守り】とも書き、昔から家の守り神になるとされている。あの男も、そんなヤモリのうちの一人…いや一匹だ」

ポカンとする嵩史に、晴明はそう説明した。

「だが、実際はそんなに力があるわけじゃない。今回の件だって、彼には何も手出しができなかった」

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