陰陽(教)師
ヤモリいわく、この家は建てられた当初から、様々な不幸に見舞われていたという。

家人は次々と亡くなり、最後に残っていた老婆も悶死を遂げた。

「住み着いた家が荒れ果てていくのを見るのは、辛かったろうな」

「それを先生が始末つけてやったわけか」

晴明は首を振った。

「俺だけじゃない。お前らだって充分働いただろうが」

確かにヤモリは『皆様』と言って頭を下げた。

「なんだよ先生、オレらをここに連れて来たのは、活動を手伝わせるためだったのか?」

「何を言ってる。俺は一度も手伝えとは言ってない。すべてはお前らの好意だろうが」

確かにそうだった。

「どうだ、人助けした後の気分は?」

「相手はヤモリだろ」

晴明の笑顔での問いかけに、嵩史は小さく舌打ちした。

しかし、その目は笑っていた。

「せんせ~」

鈴子が甘えた声を出しながら、手を挙げた。

「人助けしたらお腹すいた~」

そのまま晴明の腕にしがみつく。

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