陰陽(教)師
『ひもじい…』

今度はハッキリとそう聞こえた。

「いやぁぁぁ!」

ナナが叫び声をあげた。

驚いたヒロシがナナを見ると、彼女は天井を見て絶叫していた。

ヒロシは懐中電灯で天井を照らした。

そこには和服姿の老婆がいた。

髪を振り乱した老婆が、天井から逆さまにぶら下がっていた。

「うわぁぁぁ!」

ヒロシは叫んだ。

叫んで、そして逃げようとした。

しかし体が動かない。

恐怖で体がすくんでしまっているのであった。

それはナナも同じであった。

『ひもじい…』

老婆はつぶやくように言うと、ヒロシとナナをぎろりとにらんだ。

『ひもじい…』

言いながら、老婆は舌なめずりした。

ヒロシの脳裏に【噂】の幾つかが浮かぶ。



・老婆の死因は餓死。

・老婆は己の姿を見た者に襲いかかる。

・そして、喰い殺す。


それらが浮かび、ヒロシは腰が砕けたかのように、その場に座り込んでしまった。

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