陰陽(教)師
【杉沢東高校前】バス停にバスが停まり、一人の男が降り立った。

紺のスーツ姿で、黒いコートを羽織り、手には小振りのバック。

年齢は二十代後半から三十代前半ぐらいで、背は高い。

男は鼻を鳴らした。

平均より高い鼻である。

全体的に顔の彫りは深く、整っている。

充分、男前の部類に入る顔だ。

今日の天気は曇り。

時折、強い風が吹き、それは冷たかったが、男が鼻を鳴らしたのは寒さのせいではなかった。

男が鼻を鳴らしたのは笑ったためであった。

「まったく、なんてトコだよ」

男はそう言いながら、目の前の校舎を見つめた。

杉沢東高校は、県内では進学校の部類に入る。

毎年有名大学へ多くの合格者を送り込むが、特殊なカリキュラムがあるわけではない。

文武両道をうたい、クラブ活動も盛んで、学校指定の制服はあるが、アルバイトの禁止等、生徒を縛る校則は少ない。

学校行事の運営は主に生徒会に委ねられている。

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